「ストレス」というワードは大丈夫?薬機法(薬事法)からみる表現について調べてみた

「ストレス社会」と言われる今日この頃。ストレスの発散や解消、緩和などについて効果がありそうなことを謳っているグッズなどの広告やブログ、SNSなどを見かけることがあります。何かしらの媒体でレビューなどを発信している方の中には、薬機法(薬事法)からみて問題はないのか気になる方も多いのではないでしょうか?そこで「ストレス」というワードの表現について調べてみました。

医薬品を通販で購入するときは薬事法に気をつけよう

「ストレス」とは?

ストレスとは、元々は「外部から圧力を加えると生じる歪み」を意味する物理用語です。1936年にカナダの生理学者セリエが、外部からの刺激による動物や人の生理的な反応や行動をストレスと呼ぶ「ストレス学説」を発表したことから、医学の分野でも使われるようになり一般にも広まりました。

医学的には外からの刺激に対する心身の反応を「ストレス反応」、ストレスの原因となる反応を生じさせる刺激を「ストレッサー」と呼びます。ストレッサーには、天候や騒音といった環境的な要因や病気やケガなどの身体的要因、不安や悩みのような心理的要因や人間関係などの社会的な要因などがあげられます。

つまり、日々の暮らしの中で起こる変化や刺激がストレスの原因となります。事故や災害といったショックな出来事だけでなく、結婚や出産、進学や就職のような、一見、喜ばしいことでも日常の中の変化や刺激となり、ストレスの原因となりえるのです。

そして、ストレスを受け続けると、不眠や腹痛、暴飲暴食やイライラするなど心身に様々な影響を及ぼします。

薬機法とは?

1961年に施行された薬事法は、医薬品や医薬部外品、化粧品及び医療器具の、品質や安全性、有効性の確保のために定められ、保健衛生の向上を図ることを目的とした法律です。

2014年に再生医療等製品の新設や安全性に関する規制の強化などについて改正され、名称も「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「薬機法」と変更されました。薬機法により、医薬品や化粧品などの開発や製造、流通や使用などの段階に応じて必要な規制があり、私たちの健康が保たれているんですね。

薬機法では、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療製品等」が規制対象となっています。

薬機法と広告規制

薬機法には、広告についての規制があります。医薬品などの情報は正確に伝わらなければ、適切な使用がされない恐れがあります。また、誤った使用や認識により、適正な医療を受ける機会を逃してしまうなどの弊害も大きく、広告を規制することで医薬品などが適切に使用されることを守ることを図る目的があります。

#薬機法で禁止されている広告薬機法では、虚偽や誇大広告の禁止や特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限、承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止などが定められています。薬機法66条では、医薬品等の名称や製造方法、効能や効果、性能に関して、虚偽または誇大な記事の広告や記述、流布を禁止しています。

そして、この規制は「何人も」が対象となっています。

つまり、製造元や販売元だけでなく、広告を請け負う人や記事などで発信する人も対象となるため注意が必要です。また、第67条では、がん等の特定疾病用の医薬品などは、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限し、当該医薬品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができるとしています。

薬機法68条では、未承認の医薬品等の名称や製造方法、効能や効果、性能に関する広告を禁止しています。#適正広告基準薬機法には、広告について具体的な基準として「適正広告基準」が定められ、効果効能や用法容量について事実誤認のおそれのある表現や本来の効果効能等と認められないもの、安全性について保証する表現、医薬品的な効能効果の狂言などが規制されています。

対象となるのは、新聞やテレビ、ラジオ、ウェブサイト、そしてSNSなど全ての媒体です。薬機法の広告とは「顧客を誘引する(顧客の 購入意欲を昂進させる)意図が明確であること」「特定医薬品等の商品名が明らかにされていること」「一般人が認知できる状態であること」と明記されています。

そのため、アフィリエイト広告や記事なども該当します。

「ストレス」というワードは薬機法に違反する?

「ストレス」は、イメージしやすいワードですが、使い方によっては薬機法に違反する可能性があります。「ストレス」は前述したように、「外からの刺激に対する反応」という医学的な意味を持っています。そのため、医薬品的な効能効果と解釈される場合があり、身体の構造や機能などに影響を及ぼす表現として医薬品的な効能効果に該当します。

「ストレス」というワードは、化粧品や健康食品、美容機器などの広告には使用しない方が良いでしょう。

別のワードと置き換えるか、言い回しを変えるなどの工夫が必要になります。また、「イライラ」や「イラッとする」「イライラが落ち着く」なども「ストレス」を連想させる表現なので、広告に使う時には注意が必要です。

「ストレス」は使用できない?

ストレスとは本来は外からの刺激による反応のことです。例えば化粧品などで「紫外線によるストレス」という表現ならば、正しい意味で使うことができます。しかし、「ストレスが溜っている方に」という表現になると、この場合の「ストレス」は「医薬品的な効能効果」の意味合いを持つため違反となります。

2021年には、虚偽や誇大広告について課徴金制度が導入され、広告の作成や各媒体の発信には今まで以上に注意が必要になるでしょう。実際に、薬機法違反でアフィリエイターが書類送検される事案も発生しています。

第66条〜68条で定められている広告規制を違反した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。

口コミや体験談も規制の対象となります。体験談やブログなどでよく見かける「個人の感想です」というケースも対象となり、たとえ本当のことでも医薬品的な効能効果を謳うことはできないので気をつけましょう。

使い勝手の良い言葉だからこそ気をつけましょう

「ストレス」という言葉は「不快」や「違和感」という意味で使われることが多いのではないでしょうか?医薬品や化粧品、健康食品などは、薬機法だけでなく景表法や健康増進法にも関わってきます。気軽に使える使い勝手の良い言葉ですが、発信する際には正しい意味を理解し薬機法などの法律に則って注意を払う必要がありますね。